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今日こそは。
そう心に決めて、さり気なく、不自然にならないように彼の手目掛けて己の手を伸ばす。
「…そういえば、真田」
しかしそれは絶妙なタイミングで話しかけてきた彼の声に遮られる。
「な、何でございましょう、政宗殿?」
動揺した心臓を努めて落ち着かせながら何気ない風を装う。
彼に向けた笑顔が変に引きつっていなければいいのだが。
「此間の・・・」
それは特別今話すことでもないような、本当に場つなぎの話題だった。
何となくがっかりして、先ほどまで標的にしていた学生服から覗くすらりとした手首を見る。
しかしそこにあるはずの手はポケットの中にしまわれていた。
(…また今日も)
いい加減、気のせいとかタイミングが悪いとか、そんな言葉で済ませなくなってきた。
彼は私が触れようとすると、必ずそれを阻止する。
これでも付き合っているのだ。政宗殿と、私は。
確かに玉砕覚悟で想いを告げて、彼はそれに頷いた。
だから己たちの関係は恋人同士、という関係のはずだった。
でもそれも、今では疑問に思えてくる。
彼は私を名前で呼ばない。
触れようともしてこない。
私を見るときも、私を見ている振りをしている気がする。
(ではなぜ、私の隣にいる?)
興味が無いならあの時頷いて欲しくなかった。
なんでもない風を装って、隣になんていて欲しくもない。
でもそれは勝手な話だ。
側にいることを望んだのは己だ。彼はそれを満たしてくれている。
それ以上に何を望む?
己が彼を好いているように、彼も己のことを好いてくれることか?
「・・・真田、どうした?」
普段より口数の少ない己を不審に思ったのか(いや、己が話さないと自分が主体で話さなければいけないから、それが億劫なのだろう/それなら何も話さなければいいのに)彼が覗き込んでくる。
「い、いえ。何でもありませぬ」
愛想笑いを取り繕って、適当に彼の好みそうな話題を始めた。
でも頭の中で考えるのは只一つ。
はやく、わたしをつきおとして。
(まだ底の、浅いうちに)
終わりましょう
伊達さんは来るもの拒まず去るもの追わず、だけど幸ちゃんだけは特別って言うのが定石だと思うのですが、あえて伊達さんの特別じゃない幸ちゃんにしてみました。うんやっぱ萌える。超絶に萌える。
報われない片思いをする幸ちゃん大好きですが、付き合えたのに心を開いてもらえない幸ちゃんも中々美味だと思います。
最近秒速○センチメートルの影響で報われない話ばっか妄想中。元々、そんなのが書きたくてはじめたサイトなので初心に帰ったとでも言うべきか。